車いすの介助をする

車いすで自立した生活を送る

歩行が困難な人にとって車いすは便利な移動手段です。大きな病院であちこちの科を回るときなど、長距離の歩行に不安な人は病院の車いすを借りて移動していますね。またスーパーや自宅周辺の散歩など、付き添いの家族が車いすを押している姿をよく見かけるようになりました。パラリンピックの影響で車いすスポーツも有名です。

このように、車いすは単なる移動手段だけでなく、自立した生活を送るための重要なアイテムと考えることができます。

体格や用途に合った車いすとは?

車いすはすべて同じ構造ではなく、大きさや機能などが異なります。

そのため、一時的にスーパーなどで借りるとき以外は、その人の体格や用途に合ったものをレンタルあるいは購入します。

ここでは主に高齢者の移動介助についてお話しする予定なので、車いすを購入する人はあまりおらず、介護保険の給付を受けてレンタルするケースを前提とします。

車いすをレンタルする場合は、ケアプランに車いすの必要性を掲載してもらいます。そのためには、車いすが必要な理由を本人や家族、ケアマネージャーがよーく調べて結論を出しますが、介護度によっては介護保険給付ができなかったりしますので、担当のケアマネージャーに相談しましょう。

自走型。車輪が大きい

車いすには自分でこぐタイプと、介助してもらうタイプの2通りあります。また乗り降り時に邪魔にならないように肘かけや足おき部分がはずれるもの、狭い自宅の廊下で使えるもの、車に積むために軽いもの、などなど、その人が車いすを使うことでどのような生活が送れるのかを考えて選びます。

こちらは介助型。車輪が小さい

電動車いす

使う前に、点検をする

さて、車いすを無事にレンタル(または購入)できたら、安全に乗り降りまたは移動ができるように、介助者は点検や見守り、介助を行ないます。

点検部分は次の通り。

①グリップ

②バックレスト、シート

③タイヤ、キャスター

④ティッピングレバー

⑤ブレーキ

⑥フットレスト(フットサポート)

⑦スカートガード

⑧アームレスト(アームサポート)

①グリップ

握り部分が外れたり壊れたりしていないか。力を入れて握るため、たまにグルグル回っていることがあります。

②バックレスト、シート

背もたれや座るシートのことで、破れたりたわんでいたり、汚れてしまう部分です。

③タイヤ、キャスター

タイヤの空気が抜けると介助するとき重くなるし、座っている人も地面の震動がお尻に伝わって痛いと思います。自転車の空気入れで空気を入れます。タイヤのチューブが切れていることもあるので注意。

キャスターというのは前の小さい車輪。スムーズに回るかどうか点検します。

④ティッピングレバー

介助者が足で踏んで前輪を持ち上げるものです。ぐらついていないか注意。最近の多機能車いすにはティッピングレバーに似たものがあり、踏んで車体が調節できます。「踏まない」とシールが貼ってあったら気をつけて。

⑤ブレーキ

介助用車いすにはグリップにブレーキがあります。タイヤのブレーキとともに、効き具合を点検してください。

⑥フットレスト(フットサポート)

フットレストの部分が完全に外れるタイプは、きちんとはまっているかを確かめます。

⑦スカートガード

なぜか割れていることがあるので注意。車いすが小さすぎてお尻でスカートガードを押しやっているケースがありますが、タイヤを圧迫するので、やはり身体に合ったサイズを使用しましょう。

⑧アームレスト(アームサポート)

跳ね上げ式のものは、肘かけ部分がキッチリはまっていないことがあるので、注意します。

車いすをたたむ、広げる

初めて車いすに触れる人は、どうやって広げていいか分からないですよね?

肘かけ部分を両手で開いてから、手のひらで座面を押し開きます。完全に開いたことを確認してください。

たたむときは、座面の前後の真ん中を上に引き上げます。

ブレーキをかける

介助式の車いすは介助者の手元でブレーキをかけられます。自転車と一緒ですね。

また介助式も自走式も、車輪をロックするブレーキがついていますので、介助者が車いすから離れるときはもちろん、停止するたびにブレーキをかけるクセをつけると良いです。ちょっとだけなら大丈夫だろう、と思ったときに限って危険な状況になったりしますからね。

さあ、車いすの介助をしましょう!

車いすの構造や使い方がわかったら、実際に介助をしてみましょう。

自分で乗ってみるとわかりますが、ものすごく座り心地がいいわけではありません。特に車いすのまま車に乗ると、揺れが大きく感じます。

スピードに関して、つい介助者の感覚で押してしまうので、適切な速さかどうかを常に尋ねてください。自分でコントロールできないことって、ものすごく不安です。だからスピードだけでなく、進路やその他の情報をこまめに相手に伝えるのが、安心してもらう一番の近道です。

というわけで車いす介助をするときの注意点をまとめると、

  • 介助者が思う以上に揺れる
  • 介助者が思う以上に速い
  • 介助者は思ってもみないけど、乗っていると不安
  • だから常に声をかける

です。覚えておいてくださいねー。

それが分かったら、次は車いすに乗ってもらう介助をします。

車いすへの乗降介助

相手が自分で乗降できるかできないかで、介助は異なります。

自分で車いすに乗降できる人の場合

自分で乗降できる人の場合、介助者は車いすのブレーキがかかっているか、相手の足元に危険はないかに気をつけ、必要に応じて車いすのグリップを握って動かないようにします。

相手が倒れたときに支えられる位置に立って見守っていましょう。

乗降に介助が必要な人

たとえば片側上下肢麻痺だったら、可能な限り良い側(健側)15~20度の角度に車いすを設置し、健側の手で遠い方の肘かけを握ってもらい、立ち上がりながら座面にお尻をすべりこませる介助をします。または、杖や手すり、肘かけを頼りにイスやベッドから立ち上がり、重心を移動しながら車いすの座面前に立ち、車いすの肘かけを握ってゆっくり座ってもらいます。

立ち上がれない人を介助する場合は、現在座っている場所から車いすの座面まで、相手の腰を支えて水平に移動させます。このとき相手の足がもつれたり何かにぶつかったりひっかかっていないかをよーく確認します。自分の身体に負担が少ない力の入れ方や重心があります。足を広げて腰を落とし、重心を相手が座っている場所から車いすの座面まで横に移します。上半身だけ動かしたら腰を痛めますよ。

相手の体重を自分に預けて立ってもらって、一緒に方向転換して車いすに座らせることもできます。

いずれも手前の肘かけとフットサポート部分を外しておくと、ひっかからずにすみます。立ったり座ったりしたときに目まいがしないか気持ち悪くなっていないか、確認することも忘れずに。

相手が最小限の介助で移乗できることをめざしましょう。

移動を介助する

自分で車いすを漕げる(自走)人の場合は、環境に危険がないか確認することが介助者の仕事です。止まったときにブレーキをかけたか、進路に障害物はないか、など。電動車いすを操作している人には、スピードが出すぎていないか、勢い余ってぶつかりそうになっていないかなど見守ります。

車いすを押す介助をする場合、足を台に上げるとかブレーキをかけるなど、できることはやってもらうのが基本です。

介助者はついスピードを出して押しがちです。座っている方は、安定してはいるものの、スピードに慣れていないとか、投げ出される不安を抱えているものです。介助者はスピードや乗り心地、気分などを確認しましょう。

荒地の介助

小石がゴロゴロしていたり、草地だったり坂だったり。車いすが進む先は平坦な道路ではないことも多くあります。砂や草、石などが多い場所は前進すると車輪がスタックするので、前輪をあげながら、あるいは後ろ向きに進みます。

坂道の介助

坂道を上るときは、腕(上半身)だけで車いすを押すと腕だけに負荷がかかって痛めます。下半身の力も利用しましょう。自宅の玄関にスロープを設置することがあると思います。勾配がきつければ、介助者はグリップを握りながら横を向き、腰で車いすの背もたれを押すようなイメージで上っていきます。

坂やスロープを下るときは、後ろ向きに進みます。なだらかな下り坂のときは前進することが多いですが、相手がつんのめって座面から転がり落ちないように気をつけましょう。勾配がきついスロープを下りるときなどは、上るときと同様に横向きになり腰で車いすが下りてくるのを支えます。このとき介助者の足は進路に対して横にするとストッパー代わりになります。

段や障害物を越す、段にのる

車いすで障害物を乗り越える介助方法は、試験に出るほど基本も基本、力任せに乗り越えると腕や腰を痛めてしまいます。

まず障害物の前で止まります。ティッピングレバーを踏んで前輪を上げて障害物を越し、前進しながらそっと前輪をおろしてその勢いで後輪を上げて越します。

慣れると、障害物の前で止まらず、前進しながらこの動作ができるようになるので、前進する力をうまく使って車いすを上げ下げできます。

いずれにしろ、車いすの前輪を上げたり後輪を上げたりするのは座る人にとっては気分のいいものではありません。常に気分確認をしましょう。また、転落しないように肘かけを握ってもらい、腕や足を巻き込まないように手足の位置を気をつけます。

段にのるときも介助の動作は同じです。

前輪をちょっと高く上げ、その分後輪を上げる力も余分に必要となります。でも前輪を上げた力と介助者の全身をうまく使えば、腰や腕を痛めることなく介助できます。

高いところから降りるときは、後ろ向きに下ります。車いすのグリップを握ったまま介助者がまず下りて、後輪をゆっくりおろし、後輪が接地したら前輪が段にひっかからない位置まで下がって、ゆっくり前輪をおろします。足が段にひっかからないように気をつけてください。

慣れると流れるような動作で介助できます。いずれも上半身や腕だけで介助しないように。

下りる前に、これから下りることを相手に説明してください。後ろ向きに天をあおぐ姿勢になるので怖いと思います。そして下りるときも、下りてからも、相手に気分を確認しましょう。

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