認知症の基礎知識 ①物忘れと認知症のちがい

物忘れと認知症、何が違うの?

髪に白いものが混じるようになって、肩や腰が痛くなり、子供や孫と一緒に走り回ることができなくなったな、と感じてきたころ、人の名前がすぐに思い出せなくなったとか、会話の中に「アレ」とか「ソレ」が多くなってきたり。最近、物忘れするようになってきたよ、と笑うことがありませんか? 「オレ、認知症になったかも~」なんて冗談で言うこともあると思います。

老化による物忘れと認知症の違いって、何でしょうか?

まず、脳の老化という生理現象で起こるのが「物忘れ」。

そして、脳の神経細胞が働かなくなったり変性したりして起こるのが「認知症」。

脳の老化はあまり進まないようにすることができます。だから脳トレが流行っているのですね。認知症の場合は脳のある場所への血流が低下して神経細胞が働かなくなったりするそうなので、脳に流れる血液の異常が起こらないようにするのが認知症予防となるようですがーー要するに身体が健康な状態なのが一番なわけですね。

物忘れと認知症の脳の違いはわかったので、では具体的にどういう違いがあるのかというと、

ごはんを食べたことは覚えているが、何を食べたか思い出せないのが「物忘れ」。

ごはんを食べたこと自体を忘れるのが「認知症」。

物忘れの場合は、朝7時に卵かけごはんを作って箸で食べ、食器を洗って片付けた、という体験を覚えていて、その中の”卵かけごはん”が思い出せない。でも何かのきっかけで思い出すことができます。

認知症の場合は、同じことを体験していても、”卵かけごはんを食べた”こと、あるいは”食器を洗って片付けた”ことなどが記憶されていない状態のため、天地がひっくり返ったって、記憶にないものは思い出せない。だって”記憶にない”んだから。

というわけで、ある意味どちらも日常生活に支障をきたしている、と言えなくもないのですが、認知症の場合は、記憶できない、あるいは忘れたことを自覚していない点で、明らかに支障があると言えます。

だから、

忘れたことを自覚しているのが「物忘れ」。

記憶していないことを自覚していないのが「認知症」。

とも言えます。

まとめると、こんな感じ。

物忘れ 認知症
脳の老化 脳の神経細胞の変性
やったことの一部を忘れる やったことを記憶できない
日常生活への支障は少ない 日常生活に支障がある
忘れたことを自覚している 記憶していないことを自覚していない

認知症には原因の病気と、いくつか種類がある

認知症とは、慢性あるいは進行性の脳疾患から引き起こされる症状の総称です。

どういう症状かというと、良く知られているのが日時や名前を忘れること。それから自分のものを盗まれたという妄想、虫が這っているなどの幻視、動作緩慢などがあります。

この認知症を引き起こす脳の病気には、

神経変性疾患

脳血管障害

その他の疾患

があります。それぞれの病気がどのような認知症を引き起こすのか、以下にまとめてみました。

神経変性疾患 アルツハイマー型認知症

レビー小体型認知症

前頭側頭型認知症

脳血管障害 血管性認知症
その他の疾患 正常圧水頭症

慢性硬膜下血腫、など

その他の疾患による認知症は、治療をすれば治ります。実際に介護施設で正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫の方がいらっしゃいましたが、脳の血流を改善する治療を定期的に行なって生活を保っていました。

アルツハイマーや血管性認知症などは、「脳のある場所に血が行かなくなって脳細胞が委縮した」と勉強会で説明されました。何もしないと委縮がどんどん進むので、症状が悪化するのだとか。難しいことはわからなくても、こういう説明ならわかりやすいですね。

それぞれの認知症のちがい

私たちは「認知症」とひとくくりに言いますが、それぞれの症状に違いがあります。

アルツハイマー型認知症

脳のなかで、新しいことを記憶できる”海馬”を中心に側頭葉・前頭葉が委縮することで起こります。認知症の4割を、このアルツハイマー型が占めるそうです。最近では糖尿病が発症のリスクになることも指摘されています。そういうことなら高齢者だけでなく、比較的若い人も発症する可能性があるわけです。糖尿病は色々な病気を引き起こしますね。メタボに気を付けましょう。

症状はゆるやかに進みますが、次第に悪化します。

最初は物忘れや、忘れたことによる不安などから始まり、新しいことが記憶できない、今がいつなのか分からないと進み、ある行為ができない、場所が分からない、人格が変わる、など気づかないうちに始まり、末期症状に気づいたら実は発症して10年経っていた、ということもザラにあります。

早期に周囲が気づいて適切な対応をし、日常生活を送っている人も多くいます。

レビー小体型認知症

脳の神経細胞の中に”レビー小体”と呼ばれる異常なたんぱく質がたまって、神経細胞が徐々に減っていきます。認知症のなかで3番目に多いそうです。頭頂葉、側頭葉、後頭葉で血流の低下がみられ、アルツハイマー型との違いは、後頭葉の血流低下になります。

認知機能が日によって良かったり悪かったりし、そのうち幻視があり、夜中に奇声を上げたり、動きが悪くなって前のめりにチョコチョコ歩くパーキンソン症状が出ます。

症状がゆるやかな人もいれば進みが早い人もおり、私が知る限りではありますが、小さい虫がたくさんいると言ってつまんでいたり、身体の動きが鈍くて前のめりに小刻みに歩行していました。また飲み込みも悪く、言葉少なになり、つじつまの合わないことを話すようになり、その頃には歩けなくなりました。

前頭側頭型認知症

前頭葉や側頭葉が委縮して起こる認知症です。特徴として、行動の異常や人格の変化、言語障害がみられます。他の認知症と違い、指定難病となっています。このなかの一つに、介護現場では”ピック病”が良く知られています。

前頭葉は思考や感情の表現、判断をコントロールするため、人格や理性的な行動、社会性に大きく関わりがあります。側頭葉は言葉の理解、聴覚、味覚のほか、記憶や感情をつかさどります。

そのため前頭葉がや側頭葉が障害を受けると自発性が低下し、感情が鈍くなります。ずっと進んでくると抑制が効かなくなり怒鳴ったり暴力をふるったり。万引きとかするのも、このタイプです。でも最後には意欲が低下し、動かなくなります。

物忘れ症状が目立たない上に、病気である自覚がないので、何か変だから病院に連れて行こうとしても困難なケースが多いそうです。

そういえば、普通に話していたのにスイッチが切り替わるようにキスしようとしてきたり、胸を触ろうとしていた認知症の方々がいましたが、あれもこの”前頭側頭型”だったのでしょうか??

血管性認知症

脳梗塞や脳出血、脳挫傷などが原因で脳神経細胞が障害を受けて起こる症状です。脳のどの部分がダメージを受けたかで、現われる症状も異なります。

例えば脳の右側がやられると身体の左に障害が残りやすくなり、言葉が出てこない、理解できないなどの障害が現われ、逆だと何かしようと思ってもできない、一度に複数のことができないなど、目に見える身体障害を伴わない人は、外見だけではアルツハイマー型認知症と区別がつかないこともあります。このようなケースを多く見ている介護士たちは、これは「高次脳機能障害」だと言っています。

不活発にならない限り、認知症状が進むことはあまりありませんが、目立って良くなることもありません。

最近、脳血管障害(いわゆる脳卒中)は若い人にも多く、リハビリすれば倒れる前に戻れると信じて頑張りますが、失われた脳細胞は元に戻らないことを悟るのはずいぶん経ってから。脳卒中は高血圧や糖尿病などの悪化で起こるので、普段の生活を気をつけていれば防げる病気なんですよ。

認知症の種類はもっとあると言われていますが、以上が代表的なもの。

それでは次に、具体的な症状をそれぞれ見ていきましょう。

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