認知症の基礎知識③ どうやって対応すればいいの?(初期)

認知症は原因疾患によって出る症状が違うことは「認知症の基礎知識②」でおわかりいただけたと思います。

「ああ、認知症だからこういう行動してるんだ!」と納得したはいいけれど、問題は、じゃあどうしたらいいか、ですよね。プロの介護士でも試行錯誤しながら認知症の方のケアをしていますが、それは皆が同じではないからなのです。外に出ようとする人を止めようと、マニュアル通りに”外は暗くなってきたのでお布団に入る準備をしましょうか”と言っても通じないことだってあります。

介護士たちは認知症に関する勉強をしていますし、その対応方法も知っています。でも家族しか知らないエピソードがいっぱいあって、それがケアにものすごく重要で、しかも聞き出す時間がなかなか持てないので手探りでより良いケアができるように頑張っているのです。

ということは、つまり認知症の方の家族が、介護士のような知識と技術を持てば、その人にとって最高のケアができるんですよ!(羨ましいなぁ)

では介護士は認知症に関してどんなテクニックを持っているのか、こっそり教えてしまいます。少しでも役に立つと嬉しいです。

初期

認知症初期は、本人も家族も、何かおかしいな、ということが多いようです。

いつもは本人にすべて任せて、気になることは嗜好の違いくらいなのに、このごろいつもと違うことをするようになった、忘れっぽくなった、怒りっぽくなった、等がみられます。

デイサービスに通ってくる人については、家族が「最近おじいちゃん変なんですよー」と教えてくれることもあるし、介護士目線で見ると、何だか目の輝きが見られないなとか、下着がズボンから出るようになったとか、何となく不安定な感じがします。利用曜日が決まっていて間違えたことなどないのに、昨日の話をしてくれているのにまったく違う曜日を言っていたり。

でもこの時期、介護士が「あれっ?」と思っても、家族にとってはただの加齢による物忘れとみなされます。なんとケアマネージャーも理解してくれない人がいます。ただの体調不良と思うらしいのですが、長く現場で介護の仕事をしている介護士には、平常でないことがわかります。

物忘れ

まず、昨日やったことや、朝に食べたものが思い出せません。人や物の名前が出てこないとか、トイレに行ったのに途中でおしゃべりしたら何をしに行ったか忘れるとか。

それらは加齢による物忘れと大差ありません。

介護士たちがおかしいと感じるのは、物忘れが急に始まったり、どんなヒントを出しても思い出せないとか、忘れたことを取り繕うようにペラペラしゃべったり隠したり。それに、次々話題を変えるとか、人が何を言っていても聞かずに自分だけがしゃべっていたりするとき。

そういうときの表情や目つきがちょっと独特で、心の不安がそのまま表に出てきたような感じに見えるのです。もしかしたら本当にすっごく不安なのかもしれませんね。

この時点ではまだ生活に支障はなく、ちょっとヘンだよね、実は自分勝手な人なのかな、ぐらいに思ってしまいます。

そんなとき介護士たちはどうしているかというと、朝ごはんとか人の名前とか、別に思い出さなくてもどうでもいいことは流します。えー、忘れちゃったんですかー、じゃあ明日の朝ごはんは覚えておいてくださいね、とか。

でもどうしても必要なのに思い出せないことは、実際にその場で一緒にやります。例えば自分の名前を書くときに漢字が一つ思い出せなければ、別の紙に書いて見せながら、これですよー、と隣に置く。年齢が思い出せなければ(年齢を知らなければ不自然にならないように個人ファイルを見に行って)、〇年生まれの✖歳っておっしゃってましたよねー、と言う。トイレの水を流すことを忘れる人はとても多いのですが(これは初期ではなく、もっと進んだ状態ですが)、そんなときは介護士が流して、△さん、流していませんでしたよー、と嫌味にならないように教える。そして次にトイレに行くのを見かけたときに、トイレに行くんですかー、行ってらっしゃい、流すの忘れないでくださいねー、と毎回つけ加える。

これで良化するかどうかは微妙ですが、でも初期の段階では複雑なことでなく、いつもやっていることであれば、本人が注意さえすれば特に問題なく過ぎていくことが多いようです。なので、大げさにせず、忘れがちなことを本人が注意できるように穏やかに声かけできるといいと思います。

意欲の低下

社会的に信頼され、定年退職後も老人会の世話役などをしていた方々をケアすることも多く、彼らは人の世話をすることは厭わないけれど、自分が人の世話になるのは申し訳ないと思っています。

要介護状態になるまでは妻の買い物や通院に車を出し、グランドゴルフの会を運営しプレーも楽しみ、たまに孫と遊び・・・

心臓や足腰が悪くなり、デイサービスやリハビリを勧められ通っているうちに、危ないから一人で散歩や運転をしないで、と子供たちに言われて自由に外出できなくなると、週2、3回の通所や通院以外は家にこもることになります。庭木の手入れを熱心にやっても、1日の長いこと。

車をとりあげられた人が精神的に落ち込んで認知症状を発症したケースをいくつか知っています。特に男性に多いですね。

女性は家での仕事をとりあげられなければ元気でいられます。子供夫婦と同居して、台所仕事ができなくなると、元気がなくなります。

このように、元気がなくなるとか外に出なくなる、ベッドから出てこない、着替えすらしなくなるなどの意欲の低下は、認知症だけでなく廃用症候群やその他精神的な病気の元になり、進行すると自分で何もできなくなってしまいます。

これを防ぐには、運転やグランドゴルフや散歩する本人を主体として、家族が付き合うことです。台所仕事も洗濯もの干しも、見ていて危ないけれども見て見ぬふりして本人にやってもらっている方が、認知症ではあっても、寿命一杯までお元気でした。

でも家族には付き合う時間も体力もないのですよね。

施設も余裕があまりないし、デイサービスは自宅での生活があってこそなのでできることは限られてしまいます。何とか役割を持っていただこうと介護士たちは策をひねりますが、洗濯物たたみや茶碗ふき、植物の水やりくらいでは物足りなさすぎるようです。

自宅や施設で、重要な役割を持って生活できるような何かを、周囲は考えてあげて欲しいと思います。

人・時間・場所がわからなくなる(見当識障害)

いつものあの人がわからない

いつも見ている人が分からなくなったら、アルツハイマーならけっこう症状が進行している状態です。でも初期は、このひと誰? と思っても、さも知っているかのように振る舞うことができます。物忘れとの違いは、そのときは本当に知らない人なのです。

無理に思い出させなくても支障がないことなら、受け流してもいいと思います。でも孫を知らない人と思うのがマズかったら本人に教えてあげると良いでしょう。「孫の〇×じゃない、覚えてないの!?」なんて言うのはダメですよ。目の前の小さい子が誰か分からなくて本人が一番不安なのだから、こういうときは「T県に住んでいる私たちの息子夫婦の子供ですよ、孫の〇×くんが遊びにきたんです」と、初めての人に説明するように話してあげるといいかも。

とにかく、分からなくなったことを大げさに取り上げては逆効果です。

今が何時かわからない

家にこもって、今日が何日かわからないような生活を続けているのとは違い、時計を見てもカレンダーを見ても、それが何なのかわからないこともあります。

初期の段階なら、カレンダーの日付を見ながら一緒に口にして意識づけをするという手があります。今日は8月15日の終戦の日、暑いですね、など本人の記憶に残っているものを引き出しこともできます。

曜日や日付の意味がわかるうちは、とにかく毎日、日時を言うことを日課にすると、それなりに意識ができるはずです。時計は文字盤の配置や針の位置が理解できなくなるので、今の時間そのものが表示されているデジタル時計で対応するのもいいかもしれませんね。

どこにいるのかわからない

買い物や散歩に出て、家にどうやったら帰れるのかが急に分からなくなるようです。いつものように歩けば、または車に乗れば家に到着するのは分かるけれど、ここがどこだか分からないし、まっすぐ行ったらどこに行くのかもわからない。

方向音痴なだけなら人に道を聞けるし、地名を確認したり手がかりを探そうと考えますが、認知症の場合はそれができません。たまたま進んだ先に自宅近所の見覚えのある場所が現われて、あ、ここが家だった、無事に帰れて良かった、と安堵するそうですが・・・これはもう、ご近所に協力をお願いするのが一番良いですね。

また、ここは自分の家ではないと思うこともあるようです。いちおう、ここはあなたの家ですよと言ってみても良いでしょうが、否定されるようならば、こちらは否定せず、この人にとっての自宅はどんなところかを知り、それを演出してみると落ち着くでしょう。

よく転ぶ、モノがうまくつかめない

足腰が弱ったとか、目がよく見えなくなって細かい作業をしなくなった、などの理由もありますが、もしかしたらパーキンソン病(または症候群)かもしれません。

パーキンソンは筋肉がかたくなってこわばり関節が曲がりにくくなるとか、動作がゆっくりになったり身体のバランスがとりにくくなったり、じっとしてても手や足が小刻みにふるえることがあります。なんかロレツが回ってないなとか、飲み込みづらいとか、スプーンで食べても口に入れられずにこぼすなどが見られたら、パーキンソン病を疑って受診すると良いと思います。薬でコントロールして、生活のしづらさを改善できることが多くあります。

で、このパーキンソン病が認知症の何に関係あるのかというと、パーキンソン病とレビー小体型認知症は、レビー小体が脳の脳幹にたまるか大脳皮質にたまるか、の違いなのです。だから症状は同じあるいは似ているのです。

そのような理由で、パーキンソン病を疑ってみたら、実はレビー小体型認知症でした、という結果もあり得るわけですが、いずれにしろすり足で歩くのは初期から進んだ状態だと思います。よく転ぶな、くらいのときに気づくと対処しやすいのではないでしょうか。

入浴を拒否する

入浴に限らず、食事や服薬を拒否することもあります。

今まで最低シャワーは欠かしたことないのに何で!? 清潔を考えてお風呂に入って欲しいのに! と思うのが普通です。そこで大ゲンカになったり、介護施設では入浴拒否者とのバトルがあったりします。以前は拘束してムリヤリ服を引っ剥がしたりしていましたが、認知症対応の研究が進み、「尊厳とは何だろう」という意識が広まった今は、そんなひどいことをする介護士はいない(はず)です。

でも介護職でない家族は、正直困っていることが多いと思います。

相手が何かを拒否する理由って、何だと思いますか?

自分が何かを拒否するのは、どんなときですか?

上手に理由をつけて拒否する方もいれば、怒鳴って拒否する方もいます。

怒鳴る理由は?

どうして怒るのだろう? どうして嫌がるんだろう? と、真の理由を探ると、物事は解決します。ホントですよ。

その他、もっと色々な症状があります。

多くの場合、本人も家族も「何かおかしい」が始まりのようです。

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