歩行介助

自分の親が1人で歩けなくなるなんて夢にも思いませんよね。子供の頃は手を引いてくれたし、転びそうになるのを助けてくれたり。転んだら絆創膏を貼ってくれて。

今度は私たちが親の歩行を助けることになるのです。子供なら転んでも傷を作るだけですみますが、歳をとると骨折することも…目が見えなくなってきたとか、足腰が弱ってきた、つまずきやすくなった、片マヒになったなどなど、歩行を介助する必要がある人に、プロの歩行介助技術を伝授しちゃいます! 免許皆伝したらぜひ介護士の仲間になってくださいね(笑)

歩行介助とは

歩くときに危険がないか見守ったり、足を出すのを手伝ったりすることを歩行介助といいます。移動介助は、歩行を含めた移動を手伝うことをいいます。

歩行介助に特別な技術は必要ありませんが、相手の病気や身体的状況、目配りなど、ある知識や特別な気遣いが必要です。

対象者のことを知りましょう

まずは相手が、1人で歩くのが本当に危ないのかどうか、手助けが必要なのかどうかを見極めます。

膝が痛いけれど杖をつきながらヨチヨチとゆーっくり歩き、人混みでも相手がよけてくれればふらつかない。メガネをかけていれば目も見えるし、判断能力がある人なら、介助が必要なときに声をかけてくれるでしょう。

最近、認知症が進んで、どこか遠くの方を見ながら、足元に気を使わずサッサと歩いて行く人には、足元に気をつけてあげる人が必要かもしれません。

良くつまづくけれど、散歩が日課の人にも介助が必要でしょう。

脳梗塞の後遺症でマヒが残った人は、一人歩きが可能になるまで介助が必要です。

などなど、外面だけでなく、内面の問題でも介助が必要だったり、またたとえマヒでも介助が必要でなかったりしますので、まずは介助の必要性を、情報収集して検証しましょう。これを専門的な言葉でアセスメントといいます。

歩行介助をしてみましょう

基本的に、一緒に歩くときは相手の進路を妨げないようにします。そして可能なら相手のペースに合わせます。とは言っても、自分よりかなり速く歩かれたら介助どころじゃありませんね(笑)そんなときはゆっくり歩いてもらうか、介助を諦めるか。

次に、手をつないだり腕を組んだりすることに関しては、相手の歩行や立位の確かさで決めます。もしも手をつなぐ場合、引っ張っては危険です。また腕を組むときも同様で、さらに相手との身長差を考えます。

これはどういうことかというと、多くの場合、介助が必要な人は力が自分よりも弱いことが多いですよね。また、自分の方が歩くのも速いはずだし、人混みをぬってスイスイ歩けます。あと、たいてい相手よりも背が高い。介助者のペースで歩くと、相手を引っ張ったり急かしたりすることになるんですよ。歩きづらいですよね、これじゃ。

そのようなわけで、介護職が長くなると、自分自身の歩行速度がぐんと遅くなります (^_^;)

あと、介助するときのクセでやたらと足元や周囲をキョロキョロしちゃいます。

歩行見守り

歩行がちょっと危ないから、転ばないように付き添って見守る場合、相手がつまづいたり転んだときに受け止められる、あるいは対応できる位置に介助者はいます。

どこにどう転ぶかわからないから、ピッタリくっついたり、片手を相手の腰、もう片手を相手の肩や腕のあたりにおいて身体を相手に向けて介助している介護職がいっぱいいます。特に新人さんに多いです。確かに学校で習う基本ですから。

でも、ジャマ(笑)

介助に一生懸命になって、進路を邪魔していることに気づかないんですね。

というわけで、歩行を見守るときは、手をつないでも腕を組んでもいいので、転んでも受け止められるように、そして相手の進路とペースを妨げないこと。

杖の歩行介助

杖は、悪い方の足にかかる重心の代わりをしますーーと、杖の役割や使い方だけで延々と語ってしまいそうなので、これは別のページで説明するとして、まず杖での歩き方を知りましょう。

普通に歩くときは、右と左の足をイチ、ニ、イチ、ニ…と出していきます。

じゃあイチの足が悪い場合。出すときに「んーーーー…イチ!、ニ、んーーーー…イチ!」という具合になると思うんですよ。これはニの足が悪い場合も同様で。

そんなとき「んーーーー」のときに杖の力を借ります。

「んーーーー」は悪い方の足を持ち上げて前に出そうとしているところ。時間かかってますね。持ち上げるときに反対の足を踏ん張っていて、普通だったらその踏ん張った後に地面を蹴ってもう片方の足に重心を移そうとするのだけど、踏ん張ったままにしないと、悪い方の足に力が入りづらい(重心を移せない)ので転んじゃいます。文字で書くとややこしいですねー。

だから杖で歩くときは、

杖→悪い足→元気な足

がバランスも効率もよくて一番歩きやすいのです。

これは3動作歩行、または3点歩行と言われています。

慣れれば、

杖+元気な足→悪い足

でも歩きやすいです。こちらは2動作歩行または2点歩行と言い、スピードがあがります。

というわけで、介助者は相手の足元や周囲に気を配りつつ、このように誘導してあげます。

まとめると、以下のとおり。

3動作歩行

①杖を出す

②悪い方の足を出す

③良い方の足を揃える

2動作歩行

①杖と良い方の足を同時に出す

②悪い方の足を揃える

杖なしの歩行介助

基本的に、相手の半歩くらいななめ後ろを歩きます。左右どちらにつくかというと、例えば目が見えづらい方とか、足が弱い方とか。

いつ転んでも手が出せるように、でも歩行を邪魔しないように介助します。

左右にふらつきながら歩く人のとき、私はよく相手の脇の下に手を手刀のように入れて安全を確保し、脇を押し上げないようにかつ腕を引っ張らないように介助したり、後ろから腰を支えながら歩いたりしました。これは相手の身体状況を良く知っている場合に使えるテクニックですね。

よく、杖は年よりくさいから使いたくない、と言い張る方もいます(そういう方に限ってできたら杖を使って欲しい・・・)。そんなときは例えば相手の右脇の下に自分の左手を入れ、自分の右手のひらに相手の右手のひらを載せてもらって(または握ってもらって)歩くと安定します。

杖歩行で障害物や段をまたぐ

この介助方法は介護福祉士の筆記や実技の試験に出るくらいスタンダードなもので、介助者は相手より先に障害物をまたいで介助するか、障害物の前後に足をおいて介助します。これはどちらがより安全に介助できるかで決めます。

そして、

①障害物の前で止まる

②杖で障害物を越す

③悪い方の足で障害物を越す

③良い方の足で障害物を越す

のように声かけします。障害物がどんなに高くても低くても、介助するときの基本はコレです。まあ現実は、低いドアレールのようなものは良いほうの足から越す人もいますが・・・だからと言って、それ違います! と強く主張しても相手が混乱して足をひっかけたりするだけなので、そんなときは危険がないかどうかを見守りましょう。

杖で階段を昇降する

上下肢麻痺の方がリハビリをしていて、口を揃えて怖いというのが、前向きの階段降り。訓練が進むとスムーズに昇降できるようになりますが、それでも前向きで降りるときだけは皆さま慎重ですね。

階段を上るときは、

①杖を1段上につく

②良いほうの足を1段上げる

③悪いほうの足を1段上げる

このとき介助者は相手の後方1、2段下に位置し、悪いほうの足が段にきちんと乗っているか、足首や足底がねじれていないかを確認します。

階段を降りるときは、

①杖を1段下につく

②悪いほうの足を1段おろす

③良いほうの足を1段おろす

良いほうの足に加重しながら悪いほうの足をおろしていくわけですが、やはり段に足がきちんと乗っているか、足がねじれていないかを確認してから、悪いほうの足に加重してもらいます。

前向きに降りるのが怖ければ、後ろ向きに降りる方法もあります。この場合は、

①悪いほうの足を1段おろす

②良いほうの足を1段おろす

③杖を足が乗っている段につく

間違っても杖を先におろさないように。恐ろしいのでそんなことをする人はいないと思いますけれど。

いずれも介助者は相手より低い位置にいます。落ちてきても受け止められるような場所にいるってことですねーー受け止めるのはちょっと不可能な気もしますが(^^;)

目の見えない人の歩行介助

脳卒中で倒れて失明した人もいるし、糖尿病由来の網膜症とか、白内障で視界真っ白という人もいますので、意外と目が見えない人の歩行介助をする機会があったりします。でも自分の親の目が見えなくなる前に、病院に連れて行ってあげてくださいね、と私は思います。

それはさておき、介助者は目が見えない人の「目」(ガイド)になります。歩くとき、「目」は相手が見るべきものを代わりに見ることになるため、相手の前を歩きます。

スペースに余裕があるときは、自分の肘の上あたりをつかんでもらいます。右手でつかみたい人の場合は、介助者の左肘上を右手でつかんでもらいます。

一人分のスペースしか余裕のない場所で介助者は、自分の腕を背中に回し、相手に自分の前腕あたりをつかんで歩いてもらいます。

介助者が注意することは、相手を気にして振り返ると、進む方向を変えるのだと思われますので、何かない限り身体をひねらないこと。歩き始めたり止まったり、何かするときの説明を必ずすること。また相手のペースに合わせて歩くこと。目が見えないのでゆっくり歩いたほうがいいのでは? と思いがちですが、ペースを乱されると歩きづらいものです。

階段昇降の介助は、上るときは介助者が先にのぼりはじめて常に半分~1段先になります。降りるときは逆です。

エスカレーターは一緒に、せーの、で乗ります。

ドアを開閉して通過するときは、介助者が開けて相手に閉めてもらうのが一般的ですが、できなければドアを通過したあとに安全な場所で待っていてもらって介助者が閉める方法もあります。

さて、基本的な歩行介助の方法を記しましたが、主体は介助される方です。介助者のペースでことを運ぶと危険だということをよーく覚えておけば、お互いに満足できるスマートな介助ができると思います。

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