日本にやってきた外国人の介護職

慢性的な人手不足に陥っている介護人材に関し、政府は2020年夏までにベトナムから1万人を受け入れる数値目標を設定した。

「外国人技能実習制度」を活用する方針で、1年以内に3000人を目指す。ベトナム側も人材の送り出しに協力する意向で、今後両政府で覚書を結ぶ見通しだ。ーー毎日新聞 2018年7月26日(木)朝刊

外国人の介護職を受け入れるわけ

EPAに関しては人材の交流、技能実習生は技術を本国に持ち帰る、という目的で外国人実習生を受け入れています。介護の場合も同様ですが、アベノミクスでは堂々と介護の人材不足を外国人介護職に頼るために受け入れる、と言っていますね。

日本人ってグローバル化とかバリアフリーとか言いながら、違う文化の受け入れにとても時間がかかります。現役世代ですらそうなのに、その親世代の高齢者が無条件でウェルカムだとはいい難い(実際は順応はやいけれど)。

でもそんなこと言っていられないくらい、人手が足りないのです。

特に介護施設で介護職が不足しているのは事実で、昨日も特養などに勤務している看護師さんたちから、人手不足のために予定しているユニットをオープンできないとか、余裕のない人数で仕事をまわしている、と聞かされたばかり。とある研修の受講生たちに自分たちの施設をアピールしてリクルートしていました(笑)

給料はそこそこだし、就業条件も離職が続出するような感じではない。でも人手が、特にケアする職員が足りなくて困っているところがいっぱい。その反面、介護職の定着率がよくて募集していないのに就職希望者がどんどん来る事業所も、実はあります。

何が違うのか、どうして介護職の離職が続くのか、なぜ募集しても人材が集まらないのかについては別記事に書くとして、とにかく、人手が足りないと悲鳴をあげている施設が多いのには驚かされます。働き手に対して施設の数が多すぎるんじゃない? どこかが統合すればいいんじゃないの? と思いますが、そう単純に言えることではないのでしょうね。

そこで、働く日本人が少ないなら外国人に頼ろう、と誰が考えたか知りませんが、なるほどそれも一つの考え方です。日本人だって海外に働きにでていますからね。ただし介護の場合は、個人的に海外に移住して働くのとは異なります。なぜなら必要な人数が多いから。集団就職なのです。

労働力不足だけが理由ではありませんが、介護分野で外国人就労者を受け入れる政策がいくつかありますので、ご紹介します。

介護現場で働ける外国人は?

現在、介護現場で雇い入れ可能な外国人は、EPA(経済連携協定)によって来日した人、技能実習生、在留外国人、留学・研修生(ただし週28時間以内)です。

このうち、EPAと技能実習生について簡単に紹介します。

EPA(経済連携協定)の介護職

最初にお知らせしておきますが、経済連携協定(以下EPA)による介護人材を受け入れる目的は、経済上の連携を強化するのであって、決して労働力不足に対応するためではない、と明言されています。この点は誤解なきよう。

そのため来日のためのレベルが高く、日本で就業する目的は介護福祉士資格を取得することなのです。

●EPAって?

EPAとは協定国間の物品やサービスの貿易の障壁を撤廃し自由化しよう、さらに人や投資や色々な分野での協力など幅広く経済関係を強化しよう、という政策です。何やら分かったような分からないような、要するにモノをやりとりするときの関税をなくそうとか、高度なテクの技術者を必要な場所に派遣し合おうとか、そういうことを目指しているようです。介護人材に限っていえば、本国で有能で、さらに日本でも活躍できるレベルに到達できる可能性のあるキャリアがあるかどうか、という点で厳しくチェックが入ります。

ちなみにEPAに署名しているのは日本の他、現在はシンガポール、メキシコ、マレーシア、タイ、インドネシア、ブルネイ、フィリピン、スイス、ベトナム、インド、ペルー、オーストラリア、モンゴル。

●介護職はどこの国の人がくるの?

EPAによる介護人材の受け入れは、現在はフィリピンとインドネシア、ベトナムから。

何と平成20年からこのシステムが始まっているんですよ、そんなに前からだったとは気づきませんでした。平成20年はフィリピンからだけでしたが、その翌年からインドネシアが加わりました。最初はいずれも100人くらい。それでもけっこうな数、いますよね。

●何人ぐらいくるの?

優秀な人は、海外でも活躍したいと思うものです。私だって介護先進国で働きたいと思います(優秀かどうかはさておき)。そういう人たちがたくさん来日して介護の仕事をしてくれたら、日本人の介護従事者が減ります。ええ、間違いなく。

だから受け入れの上限を年間各国300人くらいにしています。平均して一つの県に100人くらいの人数なので、大した数ではないですね。

それでも、外国で資格をとってプロとして働きたい、という人がそんなにいるとは驚きです。

●介護ができれば誰でも日本で働けるの?

来日の資格はけっこう厳しいと思います。

看護学校か4年制大学(インドネシアは3年以上の高校)卒業者で、プラス自国の介護資格を持つ人。

こういう資格要件を見るだけでも各国の事情がわかります。フィリピンとインドネシアにも介護資格があるんですね。私は4年制大学卒業という要件でアウトです(´;ω;`)ウゥゥ 人間は学歴じゃない、というのはウソなんですね・・・

●ずーっと日本で働けるの?

介護福祉士の資格がとれれば、ずっと働けます。

資格をとるまで4年はいられます(毎年更新)が、介護福祉士の資格がとれなければ帰国です。養成学校で勉強しながら介護福祉士の資格取得を目指すコースもあるそうなので、学校が卒業できないとか、卒業しても試験に受からなければ、いくら日本で働きたくても帰国です。

介護福祉士試験に合格した人たちは自国に戻って仕事をする人も多いみたいです。こういう関わり方がEPAによる介護人材の受け入れなのですね。

外国人技能実習生

「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」というのがあるのをご存知ですか?(私は知らなかった)

技能実習制度とは、開発途上国の人材を日本に受け入れて、OJTで技能を移転する制度。要するに、現地で経済発展を担う人づくりをしよう、というものです。1960年代から技術者を招聘して技術を持ち帰ってもらったりしていたけれど、1981年に「出入国管理及び難民認定法」の中の「技能実習」の在留資格を定めたことで制度化され、2016年に上記の法律をもって整備されたわけです。理念に「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」とうたわれています。

ということはですよ、私の解釈がまちがっていなければ、人手不足だからと安易に人材を行き来させる主旨の制度ではない、ということですね? つまり外国人技能実習生には、自国の経済発展のために日本の技能と技術を学んで、自国のために働いて欲しい、という内容の制度ということです。

冒頭の新聞記事は「人手不足だから外国人を受け入れる」と読めますが、”「外国人技能実習制度」を活用して” というのがミソなのか。

どんな職種に実習制度があるの?

まず、「外国人技能実習制度」の職種を見てみましょう。

  • 農業、畜産業、漁業、養殖業、
  • 削井、板金、大工、とび、左官、配管、内装、コンクリ、築炉、
  • 食品加工、パン製造、
  • 紡績、染色、縫製、
  • 鋳造、加工、プレス、メッキ、
  • 家具、印刷、
  • 塗装、溶接、自動車整備、
  • 介護、空港グランドハンドリング、
  • その他

衣食住に関わることがほとんどですね。こういう言い方はあまり好きではありませんが、ブルーカラーかな・・・。

こういう制度があって技能者が増えて、その結果、日本の洋服とか食品とかにはメイドイン海外が多いですよね。なるほど、経済発展って人とモノがそういう風にまわるんですね。

●介護はどこの国の人がくるの?

中国、ベトナム、フィリピン、インドネシア、カンボジア、ラオス、モンゴル、バングラデシュ、スリランカ、その他などです。一番多いのはベトナム、次にフィリピンからくる実習生です。

●来日の条件は?

まずは職歴。本国で日本の介護と同等の仕事をしているか、介護の仕事をする必要がある人たちなどで、施設の介護士や看護師もOKです。

気になる日本語能力は、入国後1年目の技能等を習得する人たちにあたる1号は日本語能力検定N4合格、2、3年目の技能等を習熟する2号はN3合格。ちなみにN4はゆっくりの日常会話が理解できる、日常生活の話題が読んで理解できる程度。N3はある程度のスピードの日常会話が具体的に理解でき、難しい語句は言い換えれば理解できる程度。

この日本語能力がネックとなって、なかなか来日が進まない

また実習の習熟度をはかるための評価試験を受けることになります。

●どこに実習にいくの?

開設3年以上の介護事業所で、指導する介護福祉士や相応の資格を持つ人(看護師など)が最低1名いること、実習生5人に対して指導員1人の配置が必要なこと。

訪問介護の場合は、適切な指導体制を取ることが困難という理由で、実習不可になっています。

●実習生はどうしたら来てくれるの?

各国の認定機関(送り出し機関)が現地で実習生を募集・事前教育・選考などを行います。その選考時に立ち合って採用を決定しますが、雇用期間は3年です。日本での住居を用意するのは雇用側です。

また、採用してから書類をそろえて入館手続きをし、最初は国内で講習をします。

ベトナムから実習生を受け入れることになって、福祉学校や介護福祉士会、大きな介護事業所の方々が「現地視察」のためにベトナムに出張するという話を聞きました。現地で面接し、あとはマッチングを待っている、とも言っていました。就職希望者と雇用希望事業所とのマッチングを認定機関が行なってくれるのですね。

マッチングの結果、書類も整い、晴れて日本の施設で働いているという話もいくつか聞いていますので、近所の施設で実習生が働いている姿を見ることが増えるかもしれません。残念ながらマッチングがうまくいかなかったところもありますが。

実際に一緒に働いてみて

働く施設に外国人実習生や介護福祉士候補者が来ていますー、という人も多くなってきているかもしれません。最初は受け入れ側も不慣れでしたが、ノウハウも蓄積され外国人実習生の研修機関も増えてきました。

それでもEPAの介護福祉士候補者などは、やはり言葉を覚えるのが大変なようです。国家試験の受験者の合格率は50%で、残りの半数は、再受験を目指す人もいますが、不合格になって帰国をする人も多いようです。やはり1年前後の外国語学習だけでは現場や合格に十分な語学力を身につけるのは難しいでしょうね。

中国人の実習生は、同じ漢字の国だから何とかなるかと思っていましたが、使っている漢字が崩し字で違うのと、字を読めてもどういう意味なのかが分からない、と半泣きしていました。テキストに「自立というのは~、自律というのは~」と書いてあっても語句が難しくイメージができないと言っています。

そのようなわけで、記録をつけるのにかな~り苦労しています。頑張っているので文句は言えませんが、こちらで書き足していることも多くあります。

あと、国の気質とか生活習慣の違いがモロに出ますね。

時間になったらキッチリ休む人、逆に時間にルーズな人、ものすごく主張する人。あと、関東の人間は言葉の始まりがハッキリしていないので関西の言葉を聞くと怒られているような気分になりますが、中国人の言葉も同じようにまくしたてているのか怒っているのか・・・のような印象を受けます。いえ、実際はまったく怒っていないんですけどね。

いいこと、悪いことをハッキリしたがる点も、日本人にはちょっと馴染みがないかも。曖昧なことというのが理解困難みたいです。

「トイレ掃除して欲しいんだけど、いま他の作業やっているならいいよ」

これって、暗にあとでやってね、と言っているのに等しいと思うのですけど、うーん、日本人同士でもそんなの理解できないかな(^^;)

で、驚いたのは、利用者さんたちの柔軟性。

日本人って意外と閉鎖的だと思いませんか? グローバル化とかバリアフリーとか言いながら、異色なものを受け入れることに抵抗を示します。現役世代ですらそうなのに、その人たちを育てた高齢者が無条件でウェルカムだとはいい難い。

なのに、その高齢者が一番なじんでいます。理由は優しいからとか、いつも笑顔だから、とか。いちど垣根が崩れれば親身になるのが日本人のいいところだと私は思っています。

人材不足で余裕がない介護現場では新人教育すらできていないところが多くあって、外国人を教育するヒマがあるなら先に新人を・・・と言います。実は、それは根本的なところが問題なのですが、例えば教育するはずのリーダーを育てる風土にないとか、管理者自身が管理者として未熟だとか。

でもベトナムやその他東南アジアからの実習生の受け入れは、お互いの国にとって有益です。だから管理者から介護士に至るまで、日本国内の介護従事者の意識や教育、訓練を充実し、レベルをもっと上げないと、外国人技能生に教えてあげられる技術があっという間に枯渇してしまったら残念すぎます。

介護職がとても不足しているから外国人に手伝ってもらおうとか、外国人に日本の技術を持ち帰ってもらおうとか、アイデアは良いと思います。それを皆が実現できるシステムとか風土を作りたいし、どうしたらそれが実現できるのか真剣に考えて欲しいです、現場にも、管理者にも、お役人さんたちにも。

そして外国人に伝える立派な技術をもつ日本の介護職たちが、誇りをもって働ける社会になって欲しいです。

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