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介護の仕事は資格がなくてもできる!?
先に答えを言ってしまいますが、はい、資格がなくてもできます。
介護はなにもお年寄りに限ったことではありませんが、世間的に「介護=高齢者」ですね。なので、このサイトでは介護といえば高齢者、もっと正確にいうと介護保険給付のケアをさします。障害者や児童のケアはその都度、区別します。
さて、新人さんや見学の生徒さんに、なぜ高齢者介護の仕事をしようと思ったのか聞くと、多くが「お年寄りと接するのが好きだから」と答えます。「家で祖父母(または父母)の介護に関わっていたので」という答えもけっこうあります。
つまり、積極的に介護業界に入ってくる人たちは、高齢者介護に抵抗があまりないのですね。
私はそのような考え方とはかなり遠い位置にいて、生活費を稼ぐために誘われるまま介護の仕事をした、というのが内緒だけどホントのところ。誇りをもって介護の仕事をしている人から怒られそうですね(笑)。でもかなり長いこと続いているから、嫌な仕事ではなかったのかな。
このように、介護の仕事をする動機は人それぞれ。高齢者が好きとか、知識さえあれば両親に充分なことをしてあげられたのにとか、定年退職して社会に貢献したいとか、介護職は足りないと聞くから仕事にあぶれないだろうとか。
入り口は広くていいと思います。むしろ大歓迎、3Kと言われている介護はプロフェッショナルな仕事だってこと知ってもらいたいです。この道に入ってから貪欲に知識と技術を身につければ、誰にだってプロとしてやっていける仕事なんですから。
冒頭でも言いましたが、介護の仕事は誰にでもできます。やる、という意志さえ貫けば。
介護の仕事をするのに資格が必要だと思われるでしょうが、お宅に行ってケアする訪問介護でなければ無資格でもできます。あ、もちろん相談員とかケアマネージャーとかは別ですよ、介護職員としてケアに当たる職のことですからね。介護施設などには、何の経験も知識もないまま入職して何年も仕事をしている人もいます。資格がないと入浴介助させてもらえないところもありますが、施設によってさまざまです。
ただ何年もやっていると、もっと技術や知識を身につけたいと思ってくるし、資格を持った仲間がどんどん責任ある仕事についたり、さらに上の資格を取得しているのを見て「自分も資格をとりたい」と思います。
介護の資格にはいくつかあって、やはりめざすは国家資格の介護福祉士ですよね、履歴書にも堂々と書けるし。
で、どうやったら介護福祉士になれるのでしょうか?
介護の資格いろいろ
お宅に伺って一人でケアするためには、やはりある程度の知識と技術が必要なので、最低でも介護職員初任者研修(以下、初任者研修)を修了していなくてはいけません。もっと正確に言うと、一人でおトイレやお風呂に入るお手伝いをするためにはこの資格が必要です。以前はヘルパー2級とか3級とか基礎研修とか色々ありましたが、介護職のキャリアパスを整理していくうちに、初任者研修が介護入門の資格とされました。
ところがですよ、このところの介護職不足で、さらに介護の仕事入門の間口を広げるために(最近はシニアにも働いてもらおうと宣伝しているようですが)、高度な(?)技術を特に必要としない家事や買い物などの生活援助ができる生活援助従事者研修というものができました。
ちなみに介護予防の方々に市町村が提供する支援に従事するには担い手研修というものが用意されているようです。
ちょっと脱線しましたが、初任者研修が入門とすれば、その上位は介護職員実務者研修(以下、実務者研修)です。実務者研修を修了して3年間、現場で働くといよいよ介護福祉士の受験資格が得られるわけです。
図にしてみると、こんな感じ。
トップは認定介護福祉士と書いてあります。国家資格ではありませんが、プロを指導できる立場の偉い人みたいな感じでしょうか。2017年に11人しかいなかったので、現在もまだ少数だと思います。
生活援助従事者研修は、初任者研修のさらに下か端っこに位置するイメージになります。
介護にはどんな資格があるかわかったところで、それぞれ、どうやったら取得できるのか、そのメリットなどを見ていきましょう。
入門的研修、介護の担い手研修
担い手研修は各自治体で行われている総合事業(主に要支援、介護予防)で生活支援サービスを担うための研修です。約2日噛んで支援の概要が学べて、グレーゾーンと言われる、介護ではないけれど要支援の方々の生活援助を提供します。
介護分野で仕事をしようかな、でも大変そうだし・・・と躊躇している人たちに、21時間程度で行うのが入門的研修。これは厚生労働省主体で、研修を各自治体が行ないますが、民間に委託することも可。多少の知識を持って不安を払拭しませんか、とにかく興味を持ってくださいね、という内容になっています。
介護に関する基礎知識 | 1.5時間 |
介護の基本 | 1.5時間 |
基本的な介護の方法 | 10時間 |
認知症の理解 | 4時間 |
障害の理解 | 2時間 |
介護における安全確保 | 2時間 |
合計 | 21時間 |
修了後は就職したい人と事業所とのマッチングを行なってくれたり、上位の研修を受ける際の免除科目になったりしますので、とりあえず受けておいても損はしない内容です。
こういう研修は、研修機関にもよりますが、いい講師が授業をしてくれるところを選ぶと、「介護って面白そう」とか「研修で得た知識を現場で使ってみたい」と思えてくるんですよね。そういう講師がいるかどうかは口コミに頼るか、見学させてもらうか、自分のカンに頼るか、になるでしょうか。
認知症の知識や、一般的な介護技術なども学べるようなので、自宅で自分なりの介護をしている人にとってはお手軽で、ちょっと専門的なことも学べてお得ですね。
生活援助従事者研修
実は2018年の2月に研修のカリキュラムが厚生労働省から発表されたばかりで、現在は同省の細則に沿って各研修機関がテキストやシラバスを準備しているところだと思います。
この研修を修了すると、訪問介護事業所に所属して、家事援助のサービスが提供できます。
職務の理解 | 2時間 |
介護における尊厳の保持・自立支援 | 6時間 |
介護の基本 | 4時間 |
介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 3時間 |
介護におけるコミュニケーション技術 | 6時間 |
老化と認知症の理解 | 9時間 |
障害の理解 | 3時間 |
こころとからだのしくみと生活支援技術 | 24時間 |
振り返り | 2時間 |
合計 | 59時間 |
以上の内容を、通学して研修を修了するタイプと、通信+通学で修了するタイプが用意されるようですが、これは研修機関によります。単純計算すると、9時~17:30(休憩含む)の場合、1日7時間研修×8日と半日で修了できることになります。
利用者さんのお宅で掃除していたら、どうしてもおトイレに行きたいから介助して欲しい、と言われることも、なきにしもあらずですね。それに対応できるような技術も多少は研修に盛り込まれているはずですし、まさか「家事援助だけなのでトイレ介助はできません」とバッサリ切り捨てる人はいないと思うんですよ。
ただ家事援助としてサービス料をいただいているのに身体介護もやることになると、報酬はどういう計算になるのでしょうかね。もしかして家事援助だけど急を要する身体介護はOKになるのでしょうかーーというところが不明です。
初任者研修
この研修を修了していれば、ご自宅に伺ってケアをする訪問介護の仕事ができます。必要最低限の介護技術と知識があるとみなされるのですね。昔でいうヘルパー2級に相当するのかな、と思います。座学と介護技術の実践が多いのが特徴です。
働きながら受ける人も多いので、通学+通信の講座として設定している研修機関が多いように思います。
職務の理解 | 6時間 |
介護における尊厳の保持・自立支援 | 9時間 |
介護の基本 | 6時間 |
介護・福祉サービスの理解と医療との連携 | 9時間 |
介護におけるコミュニケーション技術 | 6時間 |
老化の理解 | 6時間 |
認知症の理解 | 6時間 |
障害の理解 | 3時間 |
こころとからだのしくみと生活支援技術 | 75時間 |
振り返り | 4時間 |
合計 | 130時間 |
生活支援技術はベッドメーキングや移乗介助、おむつのあてかたなど、専門的な実技を学びます。けっこう楽しいですよ。
実務者研修
昔のヘルパー1級相当なので、この研修を修了すると履歴書の所持資格に堂々と記入できます!
訪問介護の仕事にはヘルパーたちのまとめ役のリーダーがいて、それをサービス提供責任者といいます。サービス提供責任者は利用者とヘルパーとの調整役だったり、会議に出たり、書類を作ったり、ときには技術指導をしたりします。各訪問介護事業所に必ずいなくてはいけない役職ですが、実務者研修修了者はこのサービス提供責任者になることができます。
この研修も働きながら受ける人がいますので、通学+通信の講座を設けている機関が多くあります。通信講座がないと受講できなくなる人続出なのですーーというのも、次の表を見ていただくと判りますが、修了までの時間数が450時間!(プラス医療的ケア演習がある)
人間の尊厳と自立 | 5時間 |
社会の理解Ⅰ | 5時間 |
社会の理解Ⅱ | 30時間 |
介護の基本Ⅰ | 10時間 |
介護の基本Ⅱ | 20時間 |
コミュニケーション技術 | 20時間 |
生活支援技術Ⅰ | 20時間 |
生活支援技術Ⅱ | 30時間 |
発達と老化の理解Ⅰ | 10時間 |
発達と老化の理解Ⅱ | 20時間 |
認知症の理解Ⅰ | 10時間 |
認知症の理解Ⅱ | 20時間 |
障害の理解Ⅰ | 10時間 |
障害の理解Ⅱ | 20時間 |
こころとからだのしくみⅠ | 10時間 |
こころとからだのしくみⅡ | 20時間 |
介護課程Ⅰ | 20時間 |
介護課程Ⅱ | 25時間 |
介護課程Ⅲ | 45時間 |
医療的ケア | 50時間 |
合計 | 450時間 |
医療的ケアというのは、看護師の指導で「喀痰吸引等」をするための研修です。介護だって初めてなのに、看護のことまでやらなくちゃいけないって何よ、とビビるのが普通です。でも研修を受けると、少なくとも抵抗はなくなります。
ちなみに喀痰吸引の研修って、こういう感じ。
これは経管栄養の実技。
こういう研修があるってことは、現場でやる必要がある、ってことですね。実務者研修を修了した人は、こういう高度な技術を持っているのです。そして介護現場で3年働いてさらに知識と技術を深めたら、いよいよ国家資格の介護福祉士に挑戦します。
介護福祉士
業務独占の看護師などとは違って名称独占(介護福祉士の項を参照のこと)の国家資格ですが、資格は資格。今ではローンやクレジットカードの申請書の職業項目にも入っているくらい立派な資格です。
以前は職業分類に「介護」とか「福祉」がなく、サービス業とかその他にチェックしていたのですが、「医療・福祉」という分類ができているのを見て感涙(笑)したことがあります。
介護福祉士の資格をとるには、国家試験を受けます。
でもその前に、国家試験の受験資格を満たさなくては、試験自体が受けられません。
詳しくは介護福祉士の項で説明しますが、大学・短大・高校などの福祉学科を卒業する、福祉の養成機関を卒業する、実務者研修を修了して現場で3年働くーーこの3つが受験資格を得る道です。
私のときは介護現場で3年以上働いていれば誰でも受験できましたが、今は要件が厳しくなっています。試験問題自体も難しくなっていて、さすが介護のプロと認定されるだけのことはある、と思ったりして。
試験は毎年、1月最後の日曜日に行われます。午前・午後各2時間ずつ、実務者研修の科目プラス総合問題から125問出題され、60%の得点で、かつ各分野に得点が必要です。実技試験を受ける人もいるので、3月末には合否が分かります。
居住県に登録して、晴れて介護福祉士と名乗れるわけです。給料も実務者研修より上です。生活相談員にもなれるし、もちろん現場のリーダーの資質アリとみなされます。
でも、介護福祉士が到達点ではないのです。
認定介護福祉士
介護の仕事が体系的に整理されたのはつい最近。介護福祉士になってからのキャリアアップはケアマネージャーになるか指導者になるかーーと限られていました。
今もそれほど上位の資格があるわけではありませんが、認定介護福祉士はまさにそれ。介護福祉士になるまでには必要でなかった知識と技術を持ち、後進の指導にあたったり、さらに高い介護技術の実践力を持っていたりします。
でも2015年に認定開始されたばかりなので、まだ50人にも満たないようです。
しかもこれは民間の資格なので、国家資格よりは認知度が低いかも。
資格要件として、介護福祉士になってから実務5年以上の人が、600時間の研修を受ける必要があります。さらに介護リーダーをしているとか、施設・居宅両方の介護経験が必要とか。研修600時間の壁が高いなぁ。
研修内容は次の通り。
認定介護福祉士概論 | 15時間 |
疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅰ | 30時間 |
疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅱ | 30時間 |
疾患・障害等のある人への生活支援・連携Ⅲ | 30時間 |
生活支援のための運動学 | 10時間 |
生活支援のためのリハビリテーションの知識 | 20時間 |
自立に向けた生活をするための支援の実践 | 30時間 |
福祉用具と住環境に関する領域 福祉用具と住環境 | 30時間 |
認知症に関する領域 認知症のある人への生活支援・連携 | 30時間 |
心理・社会的支援の領域 心理的支援の知識技術 | 30時間 |
地域生活の継続と家族支援 | 30時間 |
認定介護福祉士としての介護実践の視点 | 30時間 |
個別介護計画作成と記録の演習 | 30時間 |
自職場事例を用いた演習 | 30時間 |
地域に対するプログラムの企画 | 30時間 |
介護サービスの特性と求められるリーダーシップ、人的資源の管理 | 15時間 |
チームマネジメント | 30時間 |
介護業務の標準化と質の管理 | 30時間 |
法令理解と組織運営 | 15時間 |
介護分野の人材育成と学習支援 | 15時間 |
応用的生活支援の展開と指導 | 60時間 |
地域における介護実践の展開 | 30時間 |
合計 | 600時間 |
介護とリハビリとケアマネと組織運営と包括支援を全部やっちゃおう、くらいの勢いの研修内容ですね(^^;) 社会福祉士の勉強内容と重複するので、介護福祉士の上位資格を社会福祉士にしてはマズいのだろうか・・・。
まあいずれにしろ、興味深い内容となっていますので、時間とお金がある人はぜひ認定介護福祉士を目指すといいと思います。
その他の資格
介護の現場では、介護職員以外の資格もたくさんあります。
たとえばケアマネージャー、社会福祉士、介護保険請求事務、福祉用具専門相談員、介護予防運動指導員、認知症ケア専門士、同行援護従業者、社会福祉主事、レクリェーション指導員などなど。
興味のある分野の資格をとることをお勧めしますが、いずれも介護現場を知らずに提供できるものではないと思います。まずは実務者研修を修了し介護現場で求められている知識や技術を会得してから、さらに専門分野に進むのが、プロ中のプロになる道かな、と考えます。